Blog

Tech Talk

ピックアップについて(基本編)

ピックアップの原理

ピックアップ内部の永久磁石によって磁界ができる
       ↓
その磁界の中で弦が振動すると磁界が乱される
       ↓
その磁界の乱れをピックアップのコイルが検知して
誘導電流が発生する(レンツの法則、電磁誘導)

というのがピックアップの原理です。
そのため、磁界を乱すことのできる金属製の弦を使わないと
音は出ません。

コイルは数千回、時には10,000回以上巻かれるため、ピックアップは電気的に非常にインピーダンスの高い部品です。そのため、弦振動とは関係のない外からの電磁波(照明器具、モーター、トランスなど)もそのまま拾ってしまい、それがジーというノイズとなって出てきます。
このノイズを軽減するため、ハンバッカーやプリアンプ内蔵のピックアップなどが考案されています。

コイル形式によるピックアップの種類と特徴

1.シングルコイル

棒状の永久磁石のまわりにコイルを巻いた単純な構造のピックアップです。
その名の通り、コイルは1つだけなのでコイル線の全長もあまり長くならず、また弦振動を検知する範囲が狭いことから、音色は明るめで軽めのカラッとした感じになります。
コイルが拾う外来の電磁波がそのまま出力されてしまうため、ジーというノイズが出やすいピックアップです。

2.ハムバッカー

ハンバッキングとかダブルコイルとか呼ばれることもあります。シングルコイルの弱点であるノイズをかなり減らすことできるピックアップです。
2つのコイルは互いに逆方向に巻かれ、直列につながっています。そのため、それぞれのコイルが拾う外来の電磁波(ノイズ)は打ち消されます。一方、それぞれのコイルの中にあるマグネットも極性(NとSの向き)が逆になっているので、弦の振動によって生まれる電気信号はコイル2個分になります。
コイルが2つあるため、コイル線の全長が長くなり、また弦振動を検知する範囲も広いことから、高域成分が少なめの太い音色になります。

3.P90 (P90 style pickup)

基本的にはシングルコイルピックアップですが、内部コイルの平面積が大きく、高さが低めです。そのため、通常のシングルコイル同様、ハムノイズは多めですが、太い音質で根強い人気があります。
マグネットはボビン下面に6本のポールピースを挟み込むように配置される場合が普通です。
ピックアップカバーの形状の違いよって下図の2種類があります。
Dog Ear 型ではカバーが金属製のものもあります。また、Dog Ear型は高さ調整できないのが普通です。

4.ノイズキャンセル・ピックアップ (Noise Cancelling Pickup)

シングルコイルピックアップはノイズが多いという欠点があるものの、高次倍音の再現性に優れており、ハンバッカーとは違った魅力があります。ベースでは、音の輪郭、音程感がはっきり出せるメリットもあります。そのため、シングルコイルの音をできるだけ残しながら、ハムノイズを減らしたピックアップも市販されています。ハムキャンセリング用コイルを持っていて実際にはシングルコイルではありませんが、シングルコイルピックと同サイズでもあるため、便宜的にこう呼ばれることが多いです。

スタック・シングルコイル
(Stacked Single Coil)
コイルを上下2段に重ねた形のピックアップで、上のコイル弦振動検知用、下のコイルはノイズキャンセリング用です。
通常は上下のコイルを同じ巻数にして直列で接続します。ピックアップとして作用するのは上のコイルだけですが、信号は2つのコイルを流れるので、高域が減衰した音色になります。
磁力線の飛ばし方によっていくつか異なった方式がありますが、スタック形式でハムノイズを軽減する原理はどれも共通です。

シングルコイルサイズのハンバッカー
(Sigle-coil Sized Humbacker)
ハムバッカーをそのまま小さくして、シングルコイルサイズにしたピックアップです。弦振動の検知範囲がシングルコイルと同等になるため、高次倍音は拾いやすいのですが、コイルが2つになってコイル線の長さが増えるため、高音域が減衰した音色になります。

スプリット・シングルコイル
(Split Single Coil, Side-by-side Coil Pickup)
2つのシングルコイルを横に並べた形のピック
アップです。
2つのコイルのマグネット、巻き方向は互いに
逆にします。コイル線全長が上記2つの形式ほど増えないので、高域の減衰を押さえやすい
という利点があります。ただし、2つのコイルの中心位置がやや離れるため、ハムキャンセル機能がやや劣り、逆極性のマグネットが隣接する部分(左図の赤丸、青丸部分)では、弦付近の磁界が弱くなりがちで、その部分の弦の出力が低めになる傾向があります。

内蔵プリアンプの有無によるピックアップの種類と特徴

1.パッシブピックアップ (Passive Pickup)

永久磁石とコイルだけのシンプルな構成で、ピックアップ内部に複雑な電気回路は持っていません。そのため、自然なメリハリのある音色になり、ピッキングの微妙なニュアンスも表現しやすいと言われます。
ただし、インピーダンスが高いため、特にシングルコイルではノイズを拾いやすくなります。

2.アクティブピックアップ (Active Pickup)

ピックアップの中にプリアンプを内蔵することによってインピーダンスを下げ、ノイズを軽減するピックアップです。
この方式のピックアップは、音色がやや平面的になる傾向があり、乾電池も必要なため、特にギタリストの中では敬遠する人も少なくありません。
ベースではピックアップの内部ではなく、コントロール回路の中にプリアンプを持っている製品も多くみられます。

ピックアップ構成 (Pickup Configuration) 、呼び方

複数のピックアップが使われている場合、ネック側からブリッジ側に向かって
 Neck Pickup / Middle Pickup / Bridge Pickup
または
 Front Pickup / Center Pickup / Rear Pickup
と表現されます。
また、ピックアップの組み合わせを以下のような略称で呼ぶことも多いです。
 シングルコイル X 3 : 3S, 3SC, 3S/C
 ハムバッカー X 2 : 2H, 2HB, 2H/B
 シングル + シングル + ハムバッカー : SSH
 ハムバッカー + シングル + ハムバッカー : HSH

ピックアップ高さと音の関係

同じピックアップでも、ボディにどう取り付けるかで音は微妙に変化します。
ピックガードやピックアップ枠に取り付けるためのスプリングが弱すぎると、ピックアップがしっかり固定されない状態になり、微妙にぼやけた音色になります。音の輪郭がはっきりして中低域も出るようになるので、特別な理由がない限り、ピックアップはある程度硬めのスプリングかクッション材を使用して取り付けます。
ボディの木部にピックアップを直接固定すると、さらに音の輪郭がはっきりした感じになるのですが、ピックアップの高さ調整は難しくなります。

調整方法については取扱説明書の「ピックアップの高さ調整」をご覧ください。