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金属材料について

ギターパーツに使われる金属と音

ギターパーツ、特にブリッジでは使われる金属の種類によって音色が大きく変化します。同じ名称の金属でも成分の違いで多くの種類があり、加工方法や熱処理によって金属の性質は変わるので、一概には言えませんが、ギターパーツの金属材料と音の関係は、おおよそ以下のようになります。

材料の硬度(硬さ)

部品の材料が硬いと音色も硬く、高域が強調されたものになります。
例えば、以下の金属はこの順で硬度が高くなり、これらでブリッジサドルを作ると(加工方法が同じ場合)、ギターの音色もこの順で硬く高域が強くなります。
また、同じ鉄でも、焼き入れ鋼は普通の鉄よりかなり硬いので、音色もより硬く、高域がより強く出ます。

 真鍮(ブラス)< 鉄 < ステンレス < チタン合金

サドル本体だけでなく、例えば高さ調整ネジは弦振動をブリッジプレートを介してボディへ伝達する経路になるので、このネジの材質を変えるだけでも音は変わります。
音色が冷たすぎる、硬すぎると感じられる場合、ステンレス ⇒ 鉄 ⇒ 真鍮 と変更していくことで微調整が可能です。

材料の比重

比重の大きい(重い)材料で作ると、中低域がしっかりした音、比重の小さい(軽い)材料では軽めですっきりした音になります。例えば、同じダイキャスト製法で作った場合でも、アルミダイキャストのテールピースと亜鉛ダイキャストのテールピースを比べると、アルミの方がクリアですっきりした音になります。

部品の製法

ギターパーツの場合は通常、以下の中から必要な強度、生産数、許容コストに応じて製法を選びます。

1. ダイキャスト(溶かした金属を金型に注入する製法)
 金型が必要で、大量生産向き
 複雑な形状を精度よく製造できる
 ギターパーツの場合は亜鉛合金が多い(アルミ合金を使うことも)
 機械的強度はそれほど強くない
 音色はやや暗め
 コストは低め

2. メタル・インジェクション(金属粉とバインダーを混ぜて金型に注入する製法)
 金型が必要、量産向き
 複雑な形状を精度よく製造できる
 使える材料の種類が多い
 機械的強度はダイキャストより上
 コストは高め

3. ロストワックス(ロウで作った原型を砂型で覆い、ロウを溶かし出した後、金属を流し込む方法)
 ロウの原型を作るための金型が必要
 複雑な形状もできるが、製造に手間がかかり、後加工も必要
 使える材料の種類が多い
 機械的強度はダイキャストより上
 コストは高め

4. プレス成形(板材を金型で打ち抜いたり、曲げたりする加工方法)
 金型が必要、大量生産向き
 抜き加工と曲げ加工のみ、複雑な形状には向いていない
 板材であれば材料を問わない
 素材本来の機械的強度と音色が得られる
 コストは低め

5. 切削加工(金属のかたまりから削り出して形を作る方法)
 金型は不要
 材料を問わない
 複雑な形状には不向き
 素材本来の機械的強度と音色が得られる
 コストは高め

部品の構造と音

部品の構造も音色に大きく影響します。同じ鉄製のブリッジサドルであっても、薄い板材のサドル(左)は、ブロック状のサドル(右)より「シャラーン」と軽くよく響く音になります。

ダブルロック式のトレモロユニットは、使われる金属の量も多くなるので、ギターの音色も硬い金属的なものになります。
形状はが同じでも、低価格のものは硬度が低い亜鉛ダイキャスト製、高価格のものは硬度の高い焼き入れ鋼が使われるのが普通です。焼き入れ鋼で作ったものは、耐久性が高いだけでなく、音色もクリアで輪郭がはっきりしたものになります。