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トラスロッドについて

トラスロッドとは?

ネックのほぼ全長にわたって埋め込まれている棒状の金属製の部品で、ネックの反りを調整します。トラスロッドの片側に付いているトラスロッドナットをレンチ等で回すことでトラスロッド自体が反り、それによってネックの反りも調整できるようになっています。

トラスロッドの種類

一般的にクラッシックギターにはトラスロッドは入っていませんが、それ以外のギターやベースでは以下3種類のいずれかが使われています。

1.鉄心式 (Traditional Truss Rod)

最も古くから使われているトラスロッドです。長いボルトのような形状で、少し湾曲させてネックの中に埋め込みます。トラスロッドナットを締めると、湾曲しているトラスロッドが真っ直ぐになろうし、その力によってネックの順反りを矯正します。

(長所)
単純な構造であるため、3種類の中では最も軽量、楽器の重量バランスを悪化させることが少なく、音に与える影響も少ないです。
(短所)
逆反りになったネックは調整できません。またトラスロッドナットがネックの木部を直接押す形になるので、ネック調整の効きはあまり良くありません。

2.アルミチャンネル式 (U-channel Truss Rod)

U字型断面のアルミチャンネルの中に鉄心式トラスロッドを組み込んだものです。

(長所)
トラスロッドナットが(ネックの木部ではなく)、アルミチャンネルの端部を押すので、トラスロッドとしての効きは良いです。また、アルミチャンネルがネック全体を補強してくれる効果もあります。
(短所)
逆反りになったネックは調整できません。また、アルミチャンネルの分だけ重くなり、楽器の重量バランスはやや悪くなります。アルミチャンネルの影響で、鉄心式と比べるとやや暗く鈍い感じの音になります。

3.ダブルアクション式 (2-way Truss Rod)

歴史的には最も新しい2本の鉄棒から成るトラスロッドです。2本の鉄棒の片側は溶接で固定されており、反対側にあるトラスロッドナットでお互いの鉄棒を押したり引いたりして、トラスロッド全体が順反りになったり、逆反りになったりします。

(長所)
順反り、逆反りの両方向にネックを調整できるのが最大の特徴です。このトラスロッドが登場する以前は、逆反りになったネックはフレットを抜いて指板を削り直すか、ネックを交換してしまうしかありませんでした。
また、2本の鉄棒自体が順反りになったり、逆反りになったりするので、ネックに無理な力がかかることもなく、トラスロッドの効きも確実です。また、素材が鉄なので鉄心式に近い自然な音色でもあります。
(短所)
鉄棒が2本になるので鉄心式より重くなります。

トラスロッドの共振対策

トラスロッドがネック内部で共振するのを防ぐため、トラスロッドには防振チューブを被せてあることが多いのですが、稀にネックの中でトラスロッドに遊びがあるために異音や音の詰まりなどの症状が出ることがあります。
その場合は、ネックの反り状態が良好であっても、トラスロッドナットを少し締めこむと解決することが多いです。(ネック反りに影響がない範囲で)
どうしてもトラスロッドの共振が消えず、そのネックをあきらめきれない場合、指板上面のポジションマークを外し、そこからトラスロッドに向けて穴を開けて接着剤を注入という最終手段もあります。

Model 1 では、ネックの順反り、逆反りの両方が確実に調整できることを重視して、ダブルアクション式のトラスロッドを採用しています。

トラスロッドの調整方法は、取扱説明書の「ネックの反り調整」を参照してください。

トラスロッドの入れ方 (Truss Rod Installation)

トラスロッドの調整口をヘッドストック側に持ってくるか、ネックヒール側に持ってくるかによって、以下の違いが生じます。ベース、特にフレット数が多い、あるいはスケールが長い場合は、重量バランスやトラスロッドの効きにも影響が出るので、注意が必要です。

<調整口をヘッドストック側に持ってくる場合>
・ヘッドストックが角度なしの場合、調整レンチの動作範囲を確保すると開口部はそれなりの大きさ、深さとなるため、カバーする方法か、外観的な仕上げ方法を工夫する必要があります。ヘッドストックが角度付の場合は、トラスロッドカバーを取り付けます。
・トラスロッド用の空洞が上駒下方に来るため、強度的にやや不利となり、ヘッドストック折れの原因となることがあります。
・ピックアップ等がネック端末と接近していてもトラスロッド調整口が干渉することがありません。

<調整口をネックヒール側に持ってくる場合>
・トラスロッドの重心がややボディ側に来るため、楽器全体の重量バランスが改善される傾向にあります。
・トラスロッドの作用の中心点がややボディ寄りになります。ネック反りがきれいに調整できる傾向があります。

Model 1 では、ピックアップがネック端末に接していることから、トラスロッド調整口をヘッドストック側とし、ヘッドの強度確保のため、ヘッド裏面にボリュートを設けています。